往生要集(おうじょうようしゅう)は、源信によって寛和元年(985年)に、浄土教の観点や、多くの仏教経典や論書などから、極楽往生に関する重要な文章を集めた仏教書です。死後に極楽往生(極楽に行って、生まれ変わる)には、一心に仏を想い念仏の行をあげる以外に方法はないと説き、浄土教の基礎を創りました。また、この書物で説かれた、地獄極楽の観念、厭離穢土(おんりえど)欣求浄土(ごんぐじょうど)の精神は、貴族や庶民らにも普及し、後の文学思想にも大きな影響を与えました。
一方、易行とも言える称名念仏とは別に、瞑想を通じて行う自己の肉体の観想と、それを媒介として阿弥陀仏を色身として観仏する観想念仏という難行について多くの項が割かれている。
また、その末文によっても知られるように、本書が撰述された直後に、北宋台州の居士で周文徳という人物が、本書を持って天台山国清寺に至り、中国の僧俗多数の尊信を受け、会昌の廃仏以来、唐末五代の混乱によって散佚した教法を、中国の地で復活させる機縁となったことが特筆される。