中村正直(なかむら まさなお)は、明治時代の啓蒙思想家、教育者。文学博士です。1870年(明治3年)11月9日に、サミュエル・スマイルズの『Self Help』を、『西国立志編』(別訳名『自助論』)の邦題で出版し100万部以上を売り上げ、福澤諭吉『学問のすすめ』と並ぶ大ベスト・ロングセラーとなりました。序文にある‘Heaven helps those who help themselves’を「天は自ら助くる者を助く」と訳し、今でも日本の慣用句のように使われています。
その他、ジョン・スチュアート・ミル『On Liberty』を、『自由之理』(現在では同書を『自由論』と称するのが一般的)で訳し、「最大多数の最大幸福」という功利主義思想を主張し、個人の人格の尊厳や個性と自由の重要性を強調しました。また、1873年(明治6年)、国内における学術団体の嚆矢とされる明六社の設立に参加、福澤諭吉、森有礼、西周、加藤弘之、津田真道らとともに主要メンバーとして啓蒙思想の普及に努め、機関誌「明六雑誌」の執筆を行いました。