契沖(けいちゅう)は、江戸時代中期の真言宗の僧、国学者、歌人です。徳川光圀から依頼を受けて、文献資料に根拠を求めて実証することを尊重した万葉集の注釈書『万葉代匠記』をつくりました。この結果、万葉集の中の語法に規則性があることを見出すなど、現在の日本語学の基礎となる現象を多く指摘しました。万葉集の正しい解釈を求める内に、契沖は当時主流となっていた定家仮名遣の矛盾に気づき、歴史的に正しい仮名遣いの例を『万葉集』のみならず、『日本書紀』『古事記』『源氏物語』などの古典から採集して分類しました。その研究結果に準拠した表記法は「契沖仮名遣」と呼ばれ、後世の歴史的仮名遣の成立に大きな影響を与えたのです。