これは非常に大切な一文ですね。よく戦争の被害者として「庶民」というのが出てくるわけですが、当初は政府どころか、軍中央だって満州事変には反対とまで言わなくとも少なくとも消極的姿勢だったんですよね。逆に世論が軍事行動を支持していたのです。なぜかというと、日本は第一次世界大戦中までは好景気だったんです。日本からみたらそれまでアクセスできなかった欧米の需要を取り込むことができたので、単純に市場が拡大していったんですよね。しかし、第一次世界大戦が終わって、戦後不況→震災恐慌→金融恐慌→昭和恐慌と立て続けに経済は悪化の一途をたどっています。その理由として、戦争で荒廃した欧州復興が優先されたという側面もあり、その後世界恐慌が起きたあとに各国が自国第一主義(ブロック経済)を取ったため、日本は市場アクセスが制限されてしまったのです。そうなると経済は苦境となるわけですから、市場拡大を目論む必要があり、それが満州事変という庶民・大衆・世論にとっては「壮挙」とうつったんですね。戦争が儲かるわけではないのですが、閉塞感打破と市場制限打破という側面から、世論は結果として「戦争」に熱狂的に支持していたんですね。
ざっくり用語解説