沙汰人(さたにん)・乙名(おとな)はともに惣村の指導者の呼び名です。
沙汰人は元来、荘園領主や荘官の代理人として、命令や判決を現地で執行する者をさしていましたが、惣村の発達に伴い、沙汰人は惣村とのつながりを強めていき、惣村の指導者となるケースが出てきました。
乙名は長老・宿老・老中・年寄とも呼ばれ、元々、村落の祭祀を執り行う代表者をさしていましたが、やがて惣村の指導者を意味するようになりました。乙名になりうるのは、かつての名主層や多くの耕地を保有する者などの有力者たちでした。
乙名が惣村の構成員から年功序列で選出されたのに対し、沙汰人は領主・荘官の執行人という職を出自とし、またその地位を世襲していた点が異なります。