学問のすゝめ(すすめ)は、福澤諭吉によって書かれた書物で、明治時代に100万部売れた大ベストセラーです。それまでの「人には生まれながら上下の秩序がある」とする儒教思想に由来する、当時の日本人の常識を完全に否定する「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずといへり」という冒頭の一節が非常に有名です。ただ、この「云(い)ヘリ」は「云われている」という意味で、この一文のみで完結しているわけではありません。続いてこう書かれています。「されども今ひろく、此人間世界を見渡すに賢き人あり。愚かなる人あり。貧しきもあり。冨めるもあり。貴人もあり。下人もありて、其ありさま雲と坭との相違あるに似たるは何ぞや」とあります。さらにその先の部分も含めて口語訳すると、
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言われている。人は生まれながら貴賎上下の差別ない。けれども今広くこの人間世界を見渡すと、賢い人、愚かな人、貧乏な人、金持ちの人、身分の高い人、低い人とがいる。その違いは何だろう? それは甚だ明らかだ。賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとに由ってできるものなのだ。人は生まれながらにして貴賎上下の別はないけれどただ学問を勤めて物事をよく知るものは貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるのだ。」
ということで、まさに「学問のすすめ」をしているものです。