御伽草子(おとぎぞうし)は、鎌倉時代末から江戸時代にかけて成立した、それまでにない新規な主題を取り上げた短編の絵入り物語、およびそれらの形式のことです。広義に室町時代を中心とした中世小説全般を指すこともあり、室町物語とも呼ばれます。
平安時代に始まる物語文学は、鎌倉時代の公家の衰微にともない衰えていきましたが、鎌倉時代末になると、その系譜に属しながらも、題材・表現ともにそれまでの貴族の文学とは、全く異なる物語が登場してきます。それまで長編だったものが短編となり、場面を詳述するのではなく、事件や出来事を端的に伝えるようになりました。また、テーマも貴族の恋愛が中心だったものが、口頭で伝わってきた昔話に近い民間説話が取り入れられ、名もない庶民が主人公になったり、それが神仏の化身や申し子であったり、動物を擬人化したりするなど、それまでにない多種多様なテーマが表れてきました。